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アイデアを発想したいとき、皆さんはどうしていますか?
行き当たりばったりに考えても良いアイデアは出にくいです。
先人達は、どのように考えればアイデアを発想できるのかを手法としてまとめました。その発想するための考え方、やり方といった”型”。つまりフレームワークを紹介します。実際に、私がエンジニアとして仕事上で使っているフレームワークも含んでいます。アイデア発想の際は是非使ってみてください。
アイデア発想の全体像
アイデアの発想には段階があります。
- アイデアのネタになる情報収集
発想する以前に、アイデアのネタになる情報が無いとアイデアは形になりません。逆に収集した情報が多いほど、発想するアイデアの質・量が向上します。 - アイデアの発想
収集した情報を元に、大小問わずアイデアを出し尽くします。しかし、出すアイデアはバイアス(個人の思想や知識によって偏り)がかかります。それを取り除き、意外なアイデアを出すために、新たな視点で考えたり発想済みのアイデアを発展させたりします。 - アイデアの検証
無数に出たアイデアの中で、これはと思う候補を選び、本当に使えそうか可能性はあるのか検証します。 - アイデアの選定
検証して残ったアイデアの中で、最も適しているアイデアを選定します。
これらがアイデア発想の全体像です。上記の段階ごとに、考え方の”型”であるフレームワークがあります。
ここでは、知りたい人が一番多いと思われる「2.アイデアの発想」のフレームワークを紹介します。
よくあるただフレームワークを紹介するだけではなく、”どのような時に”、”どのように”このフレームワークを使うのか?これが肝なので、この部分を中心に説明します。
アイデアの発想をするためのフレームワーク
ブレーンストーミング
アイデア発想の定番ですね。ルールは単純で、批判や評価はしない、突拍子もないアイデアOK、良いアイデアを考えるのではなく量を出す、出たアイデアから連想を推奨です。これを守ってとにかくアイデアを出すことです。
どのような時に使うか
- アイデアの形が全く無いスタートの段階
- アイデアの方向性を縛られたくない、大小・方向性様々なアイデアが欲しい
- 複数人でアイデアを考えるときの最初の意見出し
実際に、仕事でアイデアを考えるときによく使っています。何か新規ビジネスを考えようなど、方向性が決まっていないアイデアを考える際に、チームで集まって最初にブレーンストーミングをしています。良いアイデアも悪いアイデアも関係ないので批判もされず、内気な人でも自分の意見言えます。そして自分の考えを伝えられることで、チームに受け入れられたような気持ちになり、気軽な雰囲気や結束感を作れるので、アイスブレイクにもなります。ですので、何かの解決策を考えることに使うだけでなく、チームのありかたや目標でも何でもいいのでブレーンストーミングを行ってビジネススタートをする、というのも有効な使い方だと考えます。
どのように使うか
批判や評価は決してしてはいけません。
アイデア量が減ります。”その案だったら、こっちの案の方がより良い”、”その案はこっちの案と同じこと?”と批判のつもりなく言う人がよくいます。ダメです。これを言われると、アイデアをより考えて出すようになってしまいます。ブレーンストーミングで重きを置くのは量です。案が被っても後からグルーピングすればいいだけの話です。ですので、出た案に関する何らかの意見、つまり評価もしてはいけません。して良いのは、肯定すること・意見を促すことだけです。
テーマを具体的にしましょう。
自由発想とはいえ、抽象的すぎると人によってテーマ理解が大きく異なってきます。そもそもの欲しいアイデアが出てこない場合や、方向性が違いすぎてアイデアをまとめれない場合があります。沢山アイデアが出たけど結局どれも使い物にならなさそうだね、となりがちな原因はここにあります。「売れそうなビジネスを考えよう」よりも、「健康志向者のための飲食サービスを考えよう」といったように、ある程度の制約がある方が実のあるアイデアになります。しかし、制約がありすぎるとアイデア量が減ってしまうので、そのさじ加減は考える必要があり、ブレーンストーミングの一番難しいところでもあります。実体験としては、「どの市場・誰」と「自分の製品(できること)・解決したい問題(提供したい価値)」を前提条件としてテーマに盛り込むのが良いと考えます。
アイデアをチーム全員に見えるように書き出しましょう。
そこから連想して、または自分の意見を加えることで新たなアイデアが生まれていきます。書き出す時のポイントとしては、アイデアの発案者名を入れること。アイデアの内容をシンプルにまとめて、見出しを作ること。そのアイデアを出した背景(理由)を記載すること。この3つが書き出しには重要です。ブレーンストーミングを行って終わりではありません。その後、アイデアをまとめて選定していきますが、アイデアのメモを見て意味が分からない、同じアイデア名でも意味が違った気がする、どういうことだったか聞こうにも誰のアイデアか分からない、ということがよくあります。後のことを見据え、計画立ててアイデア発想を行いましょう。
ファシリテーターを決めましょう。
全員がブレーンストーミングしてもアイデアはまとまりません。むしろアイデアが減ります。ファシリテーター(進行役)を立てて、場をコントロールすることがブレーンストーミングの肝となります。ファシリテーターの役割で一番大事なことは、時間を測ることでも、アイデアをまとめることでもありません。雰囲気作りです。ブレーンストーミングをする目的はアイデアを沢山出すことです。そのためには発案者にアイデアを出しやすい場を提供する必要があります。その場を作るためには、ルールにもある批判・評価をしていないかを監視すること。最初のアイスブレイクとして自己紹介から始める、などの打ち解けるための進行をすること。アイデアを持っていても内気で出せない人もいるので、意見を待つのではなく促すこと。などを行う必要があります。その上で、余裕があればアイデアの書き出しなど記録やタイムキーパーを行いましょう。余裕が無ければ他の人に役割を振りましょう。
マインドマップ
自由に発想するブレインストーミングよりも、連想することに特化したのがマインドマップです。
テーマから何かアイデアを出し、出たアイデアから連想してアイデアを出し、もしくは別のアイデアを連想と、木枝のように枝分かれしながら発想していきます。
これを使うと、出たアイデアがどのようにして発想されたか、その思考プロセスがビジュアルで表現できるので、階層的に全体像が一目で分かります。
また、階層が深くなるとアイデアがより具体的になる傾向があります。抽象的なアイデアが混ざりやすいブレーンストーミングと比べて、アイデアの形をはっきりとしたいときに役立ちます。
どのような時に使うか
- テーマや目的が決まっていて、それに向かってアイデアを発想したい
- アイデアを深堀し、具体的なアイデアを発想したい
- 0からアイデアを考えるのが苦手、行き詰って発想が難しい時
一人でアイデアを練りたいときによく使っています。発想と同時にその発想プロセスもまとめることができているので、後に振り返ったときに何故そのアイデアを考えたのか分かりやすくて便利です。また、直観的にアイデアを出すのではなく、論理的に考えてアイデアを出していくので、自分がどのようにして発想したかを他者に説明することができます。集団でのアイデア出しでも有効です。論理的であるので他者と発想を共有しやすく、その分発想のスピードも速いです。仕事でも、大きな模造紙に皆で書きながら発想することに、このフレームワークを利用しています。
どのように使うか
横長の紙を使い、テーマを中心に据えて、大きく書きましょう。
アイデア出しというよりも、準備段階の話です。どのような準備が必要ですか?どうやって書き出していきますか?とよく聞かれます。何でもいいよ、どんなやり方でも良いというのが答えなのですが、参考に私の普段のやり方を紹介します。
- 基本的に横書きで書いていきますので、横長の模造紙を用意します。模造紙は無地が良いです。罫線があるとそれに従って書いていこうとしてしまいます。自由な書き方が自由な発想につながるので、意外と大事なところです。
- 模造紙は壁に貼って書いていくのではなく、机や床に貼ってどの方向からでも書けるようにします。全員が同時に書き出せることで、他の人につられて自分もどんどん書き出そうという気持ちになります。また、書くために移動しなくて良いので、アイデア発想だけに集中でき、効率的です。
- 検討テーマを紙の中心に記載します。このテーマから枝分かれしていきますので、大きく書きましょう。
- 筆記用具は黒の一色だけでなく、複数色用意しましょう。複数色使う理由は後ほど。
短いキーワードでアイデアを書き出しましょう。
背景や詳細は必要ありません。思い浮かぶアイデアをキーワードで表しましょう。
例えば、「学生向けの栄養満点食」ではなく「学生向け」と「栄養満点食」に分けましょう。こうすることで、学生向けから栄養満点食以外にも派生することができます。ですが、煮詰まってきた階層の深い部分では、ある程度長いキーワードを書く場合もあります。深く考えずに臨機応変にどんどん書き出しましょう。
複数色を使い、カラフルに楽しく書き出しましょう。
と言いましたが、色はどうでもいいです。ここで言いたい大事なことは、小難しく考えずに思うがままアイデアを書いていくことです。マインドマップはアイデアの背景や理由などを細かく書くことはありません。短いキーワードで書いていきますので、その分量と連想の深さが求められます。特に集団で行うときは、楽しさがアイデアの幅と量に影響します。楽しむためのツールとしてカラフルにすることです。
また、複数色を使い、個々で色を分けることで、見返したときに誰がどのアイデアを発想したのかが分かりやすくなります。個人で発想するときも枝分かれの区別がつきやすくなります。ぱっと見で全体像が分かるというマインドマップの長所を活かすためにも、カラフルにするのは有効です。
ワールドカフェ
個人で発想するのではなく、大人数が集まってアイデア発想を行います。4~6人ごとに別れて、テーマに対して話し合います。話し終えたら1人を除いて別のテーブルに席替えを行い、新しいメンバーで話し合います。これを繰り返すことで、花の受粉のように、各テーブルで異なる発想による刺激や受けた刺激を各テーブルで共有することで、新たな発想が生まれます。これにより、4~6人で別れつつも全員で話し合ったことと同じ効果が得られます。
どのような時に使うか
- チームを巻き込んで大人数でアイデア発想を行いたい
- 部門が異なる人や上下関係を超えて、オープンな環境で話し合いたい
- アイデア発想だけでなく、情報の共有や感想を話し合いたい
大人数を巻き込んでアイデア発想を行う際には、大体この形式で行っています。全員1つのテーブルで話し合うと収拾がつかなくなるので、メンバーを分けますが、分けると全員を集めた意味がなくなる。そんなときにこの手法が便利です。部門や立場が異なる人を混ぜて行うことで、一人一人がテーマに対する理解も考え方も全く異なってきます。その分、得られる刺激も大きく、今までにないアイデアが出やすいです。さらに自分もこのプロジェクトに関わっているんだと実感させることができますので、一体感が出ます。
どのように使うか
気軽に話し合えるカフェのような空間を作りましょう。
良いアイデアが発想できるときは、真面目な会議の場ではなく、居酒屋で話しているときや休憩所でリラックスしながら話している時が多いと言われます。そのようなカフェ的な場を作り出すのも、このワールドカフェの趣旨です。お菓子やコーヒーなどを用意して休憩中を演出しましょう。
全員が話し合える仕組みを作りましょう
席替えを行って情報を共有することで刺激を促すのがワールドカフェの肝なので、個々人が主役になります。
そのため特定の人が話をまとめたり議論してしまうと、後々刺激が少なくなります。
よく行う手法としては、ボールを用意して、それを持っている人が話すという仕組みにします。話し終わったら意見を他者に求め、そのボールを転がして渡します。こうすることで特定の人が話し続けることが無くなり、発言権がボールという形で分かることで、持った人は話して良いという雰囲気が作り出せます。
オズボーンのチェックリスト
上記で紹介したフレームワークとは違い、アイデアに行き詰った際に使う視点変換のフレームワークです。
考え方の切り口をリスト化しておき、それを元にアイデアを強制的に広げます。そのリストの中でもオズボーンが提唱したリストが有名です。切り口観点は9つです。「代用(代わりに使えるものはないか)」、「結合(何か別のものと組み合わせられないか)」、「応用(他の物に適用できないか)」、「修正(見た目、使い方を変えられないか)」、「拡大(対象を広げられないか)」、「転用(別の分野など新しい使い道はないか)」、「縮小(機能を削除・縮小できないか)」、「編集(別の物に入れ替えれないか)、「逆転(順番を逆にできないか)」の9つです。
どのような時に使うか
- アイデア発想に行き詰ったとき
- 時間をかけずに効率よく発想を行いたい
- よく浮かぶような王道なアイデアを網羅しておきたい
アイデアを考えるのが苦手な人にとって、切り口が決まっているのは有効です。また、この9つの観点は先人がブラッシュアップを行って絞った観点です。思いつくままに考えるよりも、この観点で考える方が良いアイデアが出る可能性が高くなります。しかし、有名が故に、他の人もこの切り口で考えているので、意外性のあるアイデアが出る可能性は高くはないでしょう。夢のあるアイデアよりも、現実的で堅実なアイデアを出したいときに良く使います。
どのように使うか
独自にチェックリストを作ろう。
9つの観点をベースにしますが、考えるテーマによって使うべき切り口は変わります。切り口を減らしたり、追加したりして、自分のテーマに沿ったチェックリストに変更しましょう。とはいえ、ブラッシュアップされた9つの観点ですので、その観点は使用してオリジナルの観点を追加するやり方がオススメです。
なぜなぜ分析
アイデア発想のフレームワークとは少し異なり、アイデアテーマの元となる課題や原因を精査するフレームワークです。使い方は簡単です。課題に対して何故?を繰り返していくだけです。例えば、「システムの障害が発生した」というテーマ課題があったとして、それは事象であり、原因ではありません。そのため「システム障害を発生させないためにはどうするか?」というアイデア発想を行っても見当はずれなアイデアが生まれます。テーマが間違っていてはアイデア発想を行っても意味がありません。そのためテーマはしっかり分析しましょう。
どのような時に使うか
- 課題の真因を掴みたいとき
- テーマの精査を行うとき
- 何かを改良したい時のきっかけを探るとき
これは仕事上でもよく使い、何か問題が発生した際には関係者を集めて必ず実施します。対処にしても、今後繰り返さないための対応策にしても、問題の原因を知る必要があります。その際に、このフレームワークは有効です。トヨタ自動車でこの方法を推奨しており、5回は何故を繰り返すことを行っていたそうです。現在は自動車分野だけでなく様々な分野で利用されているので、回数にこだわる必要はなく真因にたどり着いたかどうかを重視しましょう。
どのように使うか
原因に至るために何故を積み重ねていきましょう。
「システムの障害が発生した」というテーマ課題に対して、「システムの障害が発生した」何故?「プログラムが間違っていた」何故?「担当者がある部分を勘違いしていた」何故?「開発ルールが明確でなかった」何故?「開発ルールを作る時にレビューが行われなかった」何故?「作業が多く、プロジェクトリーダーにレビューをする余裕がなかった」といったようにです。
すると、「システム障害を発生させないためにはどうするか?」というテーマではなく、「プロジェクトリーダーが本来するべき仕事は何か?」や「プロジェクトリーダーにどうやって余裕を作るか?」になります。何故を重ねるごとに、より具体的になり、本質をとらえたテーマになります。
何故?で出てくる事象は具体的に表現しましょう。
抽象的な表現では正確な分析ができなくなります。「指示が悪かった」という曖昧な表現ではなく、「製造作業に対する指示が漏れていた」と具体的にしましょう。また、「プロジェクトリーダーが製造作業に対する指示を漏らしていた」といったように「誰が・何が」も明確にしましょう。
問題だけでなく、成功したことにもなぜなぜ分析を行いましょう。
ありがちなのが、問題に対してだけ、なぜなぜ分析をして対策を打つことです。障害の再発防止に有効なので使い方は正しいです。ですが、他のプロジェクトの品質を上げるためにも、成功体験を分析して良いことは取り入れていきましょう。
どのフレームワークも共通すること
- リラックスして発想することが重要です。緊張や焦りでアイデアを出そうとすると、人は無意識に”自分の過去の経験”から発想します。そのようにバイアスがかかってしまうと、今まで考え付かなかったアイデアは出なくなります。楽しんでアイデア出しをしましょう。
- やり方やルールに縛られる必要はありません。フレームワーク通りに行うことが目的ではなく、アイデアを発想することが目的です。自分たちやりやすいようにアレンジしてもらっても構いません。仕事でも複数チームでアイデア発想を行った際には、各チームで微妙にやり方が異なっています。ですが各チームともアイデアが多くでてきます。あくまでフレームワークは参考として、適した自分たちの型を作っていきましょう。
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